DSPはなぜアドネットワークに勝てないのか~はじめに

最初に断っておきますが決してDSP(Demand Side Platform、以下DSP)を否定する意図はありません。DSPは将来性のあるサービスです。ただし現状は十分に力を発揮できていません。

 

2014年はアドテク業界が賑わった1年になりました。同年6月、アドテクを駆使したDSPを提供するフリークアウトが上場を果たし、ピーク時には時価総額500億円を突破。未知のサービスに期待を集めましたが、その後1年足らずで利益予想の下方修正が出るなどし、株価は3分の1以下になりました。

 

アドテクとは広義にはネット広告に関するあらゆる技術のことですが、最近では「メディアに訪れるユーザーを特定し、マッチした広告を配信する」などの高度なものを指すことが多いです。このため「枠から人へ」などと言われ、従来の広告枠の売買ではなく、訪れるユーザーを売買することが増えました。この「枠から人へ」を体現したといえるDSPは、非高度なアドテクと思われていたはずの「アドネットワーク」に売り上げで完敗です。なぜこんなことが起きているのでしょうか?

 

理由を簡単に説明すると、広告配信サービスの多くがアドテクの上手な利用ができていないのです。アドテクを導入したコストは広告主やメディアなど関係者の誰かが負担することになるので、アドテクを上手に利用できないと、かえって悪いサービスになるのです。スポーツに例えると基本ができていない初心者が、難易度の高い技ばかり使って逆に下手になるようなものです。

 

このカテゴリでは「DSPがなぜアドネットワークに勝てないのか、ではどうしたらよいのか」について書いています。

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はじめに

 1章 DSPはなぜアドネットワークに勝てないのか
・続々出現するアドテク企業
・アドネットワークに勝てないDSPの売上高
・「ネンド」「アイモバイル」強者の共通点
・「枠から人へ」は間違いだった
・アドテクの使い方が下手
・データ利用で下がる広告効果
・アトリビューションは気にするな
・DSPの構造的弱点


2章 広告配信サービス成長法の基本
・広告配信サービス成長法の基本
・1兆超の組み合わせは見えざる手で
・配信精度を磨いてLTVを上げろ
・ユーザー負担増でマネタイズ
・強引にCTRを上げろ
・コンサル強化へ
・広告とメディアの親和性を知れ

・管理画面を使いやすく
・超希少な人材を確保しろ
・マッチングは最強の技術である

 

江波戸浩之
 

続々出現するアドテク企業

2014年はアドテク企業3社が上場。6月24日にDSPを展開する㈱フリークアウト、同年7月2日にはSSP(Supply-Side Platform)を展開する㈱VOYAGE GROUP、同年12月19日には「パーソナライズレコメンデーションサービス」を提供するサイジニア㈱。それぞれピーク時には数百億円を超える時価総額に達しました。そのほか名だたる企業がアドテクへ参入しており、アドテクへの注目が集まっています。

 

国内DSPの主要プレイヤーを紹介します。国内ではサイバーエージェントグループが展開する「マイクロアドブレード」、2014年に上場した「フリークアウト」、KDDI子会社の「スケールアウト」、㈱ユナイテッドが展開する「バイパス」、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム㈱が展開する「マーケットワン」、㈱オプトとCCC㈱が展開する「クロスト」、そのほか小さいところも含めると数十に上る企業が競い合っています。

 

DSPは会社によって何が違うのでしょうか?

 

配信アルゴリズム、配信可能な提携メディア、管理画面の使いやすさ、ターゲティング機能、料金、手数料、担当者、資本力などに違いが出ます。そしてこれらの違いによって同じDSPでも広告効果に歴然とした差が出ます。

 

また、いわゆるDSPではありませんが、グーグルやヤフー、アドネットワークやアフィリエイトを展開する企業もアドテクを駆使し、広告主とメディアを奪い合っており競合関係といえます。

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はじめに

1章 DSPはなぜアドネットワークに勝てないのか
・続々出現するアドテク企業
・アドネットワークに勝てないDSPの売上高
・「ネンド」「アイモバイル」強者の共通点
・「枠から人へ」は間違いだった
・アドテクの使い方が下手
・データ利用で下がる広告効果
・アトリビューションは気にするな
・DSPの構造的弱点


2章 広告配信サービス成長法の基本
・広告配信サービス成長法の基本
・1兆超の組み合わせは見えざる手で
・配信精度を磨いてLTVを上げろ
・ユーザー負担増でマネタイズ
・強引にCTRを上げろ
・コンサル強化へ
・広告とメディアの親和性を知れ

・管理画面を使いやす
・超希少な人材を確保しろ
・マッチングは最強の技術である

アドネットワークに勝てないDSPの売上高

そんなDSPですが、アドネットワークに売上で完敗と言ってよいでしょう。まずはDSPの売上から確認していきましょう。

 

国内DSPの最大手とみられるサイバーエージェントグループの「MicroAd BLADE」の月間売上高は5億円程度、2番手とみられる2014年に上場を果たしたばかりの「フリークアウト」の月間売上高は3億円程度、KDDI子会社の「スケールアウト」や上場企業のユナイテッドが展開する「バイパス」の月間売上高は1億円前後とみられています。ほかにもたくさんのDSPがありますがほとんど月間売上高5000万円未満でしょう。

 

一方のアドネットワーク1位の「ネンド」は、ここにきて減速しているものの1社で月間売上高10億円を突破しておりDSPが束になっても敵いません。2位の「アイモバイル」も月間売上高10億円弱あるとみられ、アドネットワークの層の厚さを感じさせます。3位は、DSP1位「MicroAd BLADE」と同じグループの「AMoAd」が月間売上高3億円前後。

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はじめに

1章 DSPはなぜアドネットワークに勝てないのか
・続々出現するアドテク企業
・アドネットワークに勝てないDSPの売上高
・「ネンド」「アイモバイル」強者の共通点
・「枠から人へ」は間違いだった
・アドテクの使い方が下手
・データ利用で下がる広告効果
・アトリビューションは気にするな
・DSPの構造的弱点


2章 広告配信サービス成長法の基本
・広告配信サービス成長法の基本
・1兆超の組み合わせは見えざる手で
・配信精度を磨いてLTVを上げろ
・ユーザー負担増でマネタイズ
・強引にCTRを上げろ
・コンサル強化へ
・広告とメディアの親和性を知れ

・管理画面を使いやす
・超希少な人材を確保しろ
・マッチングは最強の技術である

「ネンド」「アイモバイル」強者の共通点

アドネットワークが強いというのは少し語弊がありまして、「ネンド」と「アイモバイル」の2社が強くて、その他は伸び悩んでいます。ではなぜこの2社が強いのか?共通点を挙げてみます。

 

①配信方法が枠毎の広告効果によって枠毎に入札単価を自動で変動させる

DSPは配信先を人を中心に決めます

※配信方法は選べる

DSPが流行る前からサービス開始

2社共DSPが流行る前から広告配信サービスを行っており、高度なアドテクを使わない時代に、いかにCPAを下げられるか考え抜いてきた歴史があります

管理画面が使いやすい

 

ほかにも強い理由はたくさんあると思いますが、この辺りが特徴的だと思います。2009年頃までの広告配信サービスは、配信先が選べないのが当たり前でした。配信精度を上げようとする発想に乏しく、なんとなく配信の手間がラクになる程度のサービスでした。そしてどこよりも早く配信先を選べる機能を導入したアイモバイル社が当時業界ナンバーワンになれたのは必然といえるでしょう。

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はじめに

1章 DSPはなぜアドネットワークに勝てないのか
・続々出現するアドテク企業
・アドネットワークに勝てないDSPの売上高
・「ネンド」「アイモバイル」強者の共通点
・「枠から人へ」は間違いだった
・アドテクの使い方が下手
・データ利用で下がる広告効果
・アトリビューションは気にするな
・DSPの構造的弱点


2章 広告配信サービス成長法の基本
・広告配信サービス成長法の基本
・1兆超の組み合わせは見えざる手で
・配信精度を磨いてLTVを上げろ
・ユーザー負担増でマネタイズ
・強引にCTRを上げろ
・コンサル強化へ
・広告とメディアの親和性を知れ

・管理画面を使いやす
・超希少な人材を確保しろ
・マッチングは最強の技術である

「枠から人へ」は間違いだった

枠を選んで広告配信するのではなく、枠に訪れる人を選んで広告配信する、いわゆる「枠から人へ」という概念が間違いでした。正しくは「枠だけから人も」です。いろいろ理由があるので順番に説明していきます。

 

第一に、人を選んで限定配信することはコストがかかるわけです。ですから最初から極力アドテクに頼らずに済むような親和性の高い広告を配信したほうが効率的です。第二に、どの人に配信すればLTVが上げられるかわかる能力者が少ないです。第三に、人を絞り込むターゲティング精度が高くないです。現実的には、人を選んで効果を上げやすいのはリターゲティング広告と呼ばれるものくらいで、そのほかは効果を下げかねないのです。

 

また広告配信サービスにとって「広告主へ適切な広告費を負担してもらい、メディアへ適切な報酬を支払う」ということは最重要課題といえます。これが不公平だと不遇を受けているプレイヤーから離脱していき、最終的に誰も居つかないからです。そんな不公平を助長するのがDSPに多い「人」情報のみで入札する仕組みです。説明しましょう。

 

有効なクリックが多い広告枠と誤クリックの多い広告枠の価値は大差があります。特にパソコンに比べるとスマートフォンは誤クリックが発生しやすいです。またスクロールしないと見えない広告枠とスクロールしなくても見える広告枠の価値も大差があります(グーグルは広告が実際に視認できる場合のみカウントすることを試みている)。それにも関わらず同じ「人」ということだけで同じ単価で取引するのは不公平なのです。

 

例えば、広告主が広告配信サービスを通してAとBのメディアに広告を配信し、トータルで1億円の価値を感じたとします。AはBの2倍効果が高いとします。しかし中間にいる広告配信サービスがメディアAとメディアBに均等に5000万円ずつ報酬を支払ってしまうと、メディアAはメディアBの2倍の報酬を受け取ってもよいはずなのに受け取れないということになり、適切な報酬を分配してくれる広告配信サービスに乗り換えようとします。一方のメディアBは本来メディアAの半分しか報酬が受け取れないはずなのに、均等に報酬を受け取れるのでその広告配信サービスに居つこうとします。

 

逆に枠情報だけで入札させた場合は不公平が起こりにくいのです。なぜなら元々「人」を抱えているのは「枠」であり、そこを一体とした広告費&メディア報酬になるからです。

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はじめに

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・アドネットワークに勝てないDSPの売上高
・「ネンド」「アイモバイル」強者の共通点
・「枠から人へ」は間違いだった
・アドテクの使い方が下手
・データ利用で下がる広告効果
・アトリビューションは気にするな
・DSPの構造的弱点


2章 広告配信サービス成長法の基本
・広告配信サービス成長法の基本
・1兆超の組み合わせは見えざる手で
・配信精度を磨いてLTVを上げろ
・ユーザー負担増でマネタイズ
・強引にCTRを上げろ
・コンサル強化へ
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・超希少な人材を確保しろ
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 アドテク関連のコンサルお受けします

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アドテクの使い方が下手

広告配信サービスには使えない高度な機能がたくさんあります。手元にあるいくつかのDSPの資料を読むと、「天気・気温指定配信機能」や、配信先のメディアカテゴリに「政治」や「科学」、配信先のユーザーカテゴリに「ペット」「殺虫・防虫剤」などがありました。わかる方にはわかると思いますが、効果的に利用される可能性がゼロに近い機能です。ターゲティング精度を部分的に上げるのは簡単ですが全体的に精度を上げるのは難しいのです。

 

使える機能があったとしても、それを使える機能だと判断し使いこなせる能力ある人が、広告主にも代理店にも、サービスの中の人にも少ないです。このため確立されたアドテク利用マニュアルがない場合がほとんどで、営業マンからは「いろいろ試してABテストしてください」などと言われることもあります。こうしてアドテクは宝の持ち腐れになっていきます。

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はじめに

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・続々出現するアドテク企業
・アドネットワークに勝てないDSPの売上高
・「ネンド」「アイモバイル」強者の共通点
・「枠から人へ」は間違いだった
・アドテクの使い方が下手
・データ利用で下がる広告効果
・アトリビューションは気にするな
・DSPの構造的弱点


2章 広告配信サービス成長法の基本
・広告配信サービス成長法の基本
・1兆超の組み合わせは見えざる手で
・配信精度を磨いてLTVを上げろ
・ユーザー負担増でマネタイズ
・強引にCTRを上げろ
・コンサル強化へ
・広告とメディアの親和性を知れ

・管理画面を使いやす
・超希少な人材を確保しろ
・マッチングは最強の技術である

データ利用で下がる広告効果

次のケースで類似商品を買う可能性が高いのはどっちの人でしょうか?

 

①年齢も住んでいる地域も違うけど、似た商品を買う人

②年齢と住んでいる地域が同じだけど、似た商品を買うか未知な人

 

もちろん①ですよね?さらに言えば②はほぼ現実的ではありません。

 

「枠から人へ」で配信するようになると、「人」の行動記録や属性情報を指す「オーディエンスデータ」の利用が重要になってきますし、同データを利用することで広告効果を上げられることは間違いありません。特に行動記録を利用したリターゲティング配信の広告効果は高いです。しかし当然のことながらデータを上手に利用できないと広告効果は下がります。そして上手に利用できないケースがほとんどです。誤って②が有効だと思って配信してしまう人が多いのです。

 

極端な例を挙げます。ラーメン好きという属性情報のあるユーザーに、海外のラーメン屋の広告を配信しても他の広告に比べて費用対効果が悪いでしょう。それくらいなら近所のパスタ店の広告を配信させた方がよっぽど広告効果があります。親和性が高いことと広告の費用対効果は別次元なのです。

 

今、データ周りのワードが流行っています。膨大なデータである「ビッグデータ」、それを扱う「データサイエンティスト」、データを活用しやすくする「DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)」、最強と言われる「統計学」など。しかし現実的にはデータを有効利用できるスキルのある方が少ないので、そういう意味でデータの価値は低く今かなりバブルです。

 

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・「枠から人へ」は間違いだった
・アドテクの使い方が下手
・データ利用で下がる広告効果
・アトリビューションは気にするな
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2章 広告配信サービス成長法の基本
・広告配信サービス成長法の基本
・1兆超の組み合わせは見えざる手で
・配信精度を磨いてLTVを上げろ
・ユーザー負担増でマネタイズ
・強引にCTRを上げろ
・コンサル強化へ
・広告とメディアの親和性を知れ

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・超希少な人材を確保しろ
・マッチングは最強の技術である