「枠から人へ」は間違いだった

枠を選んで広告配信するのではなく、枠に訪れる人を選んで広告配信する、いわゆる「枠から人へ」という概念が間違いでした。正しくは「枠だけから人も」です。いろいろ理由があるので順番に説明していきます。

 

第一に、人を選んで限定配信することはコストがかかるわけです。ですから最初から極力アドテクに頼らずに済むような親和性の高い広告を配信したほうが効率的です。第二に、どの人に配信すればLTVが上げられるかわかる能力者が少ないです。第三に、人を絞り込むターゲティング精度が高くないです。現実的には、人を選んで効果を上げやすいのはリターゲティング広告と呼ばれるものくらいで、そのほかは効果を下げかねないのです。

 

また広告配信サービスにとって「広告主へ適切な広告費を負担してもらい、メディアへ適切な報酬を支払う」ということは最重要課題といえます。これが不公平だと不遇を受けているプレイヤーから離脱していき、最終的に誰も居つかないからです。そんな不公平を助長するのがDSPに多い「人」情報のみで入札する仕組みです。説明しましょう。

 

有効なクリックが多い広告枠と誤クリックの多い広告枠の価値は大差があります。特にパソコンに比べるとスマートフォンは誤クリックが発生しやすいです。またスクロールしないと見えない広告枠とスクロールしなくても見える広告枠の価値も大差があります(グーグルは広告が実際に視認できる場合のみカウントすることを試みている)。それにも関わらず同じ「人」ということだけで同じ単価で取引するのは不公平なのです。

 

例えば、広告主が広告配信サービスを通してAとBのメディアに広告を配信し、トータルで1億円の価値を感じたとします。AはBの2倍効果が高いとします。しかし中間にいる広告配信サービスがメディアAとメディアBに均等に5000万円ずつ報酬を支払ってしまうと、メディアAはメディアBの2倍の報酬を受け取ってもよいはずなのに受け取れないということになり、適切な報酬を分配してくれる広告配信サービスに乗り換えようとします。一方のメディアBは本来メディアAの半分しか報酬が受け取れないはずなのに、均等に報酬を受け取れるのでその広告配信サービスに居つこうとします。

 

逆に枠情報だけで入札させた場合は不公平が起こりにくいのです。なぜなら元々「人」を抱えているのは「枠」であり、そこを一体とした広告費&メディア報酬になるからです。

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はじめに

1章 DSPはなぜアドネットワークに勝てないのか
・続々出現するアドテク企業
・アドネットワークに勝てないDSPの売上高
・「ネンド」「アイモバイル」強者の共通点
・「枠から人へ」は間違いだった
・アドテクの使い方が下手
・データ利用で下がる広告効果
・アトリビューションは気にするな
・DSPの構造的弱点


2章 広告配信サービス成長法の基本
・広告配信サービス成長法の基本
・1兆超の組み合わせは見えざる手で
・配信精度を磨いてLTVを上げろ
・ユーザー負担増でマネタイズ
・強引にCTRを上げろ
・コンサル強化へ
・広告とメディアの親和性を知れ

・管理画面を使いやす
・超希少な人材を確保しろ
・マッチングは最強の技術である

 

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